2007年10月4日木曜日
奈良ー京都ー滋賀の旅(長編)
9月24日 奈良 Y&Y
共演の、ギターパンダことヤマカワノリヲさんとは初対面。
けれど、事前にハッチェルさんから彼の話は聞いていたので、なんだか初めてな感じがしない。
着ぐるみのかわいらしい巨大なパンダがステージで熱くギターをかき鳴らしながら歌うさまは、笑えると同時に、なんだか切ないような気持ちにもなる。見た目はふざけているけれど、芯のところはとても真面目な、年期の入ったステージだった。
そしてワタクシのステージを終え、アンコールでは、完全に"ただのおっさん(本人曰く)"になっているノリヲさんをステージに引っ張り出し、無謀にも彼の知らないわたしのオリジナル曲にエレキギターを添えてもらう。曲中でギターチューニングから始めるノリヲさん(もうすでに弦をゆるめてあった)。申し訳ない。けどロックを添えてくれてありがとう。
ライブ後の飲みは、1件目が早々に店じまいとなり、2件目に移動(この時すでに3人に減っている)、いろいろとしゃべりながら深夜になり、夜中3時の時点でワタクシは翌日のライブのために、残りふたりを残し、切り上げることにした。ノリヲさんは"なんで〜!もっと飲もうよ〜!"と引っ張っていたが、たぶんそれに付き合って朝まで一緒に飲み続けたとしても、今帰るにしても、どちらにしてもきっと酔っぱらった彼の記憶にはとくに残らないだろう、と判断し、思い切って飲み屋を後にした。
ホテルに戻ってシャワーを浴び、就寝。
9月25日 奈良 新ノ口 GOOD LOVIN'
午前中からひとりで奈良観光。
奈良に来たからには、鹿とかに会わなきゃ。
まずは、興福寺。
空は青く、気温もちょうどいい。最高。
それから、春日大社に向かう。
その道のりがかなり長く、道の途中には、
鹿、
鹿、
鹿。
最初は、おおう〜、鹿だ〜!野性の鹿が、そこらじゅうに!しかも普通の道路を悠々と歩いている!!などと感動していたが、そのうち慣れてくる(笑)。
そうして、春日大社までの参道を、鹿たちを眺めながら延々と歩いて、やっとこ本殿まで到着。
無事お参りを済ませ、もと来た道を戻っていると、宮司さんらしいおじさんがフリーな感じで近寄ってきた。
「どっから来たん。」
東京からです、と答えると、
「そんなら薬師如来さん見なあかんわ、時間あるか?」
まああります、と答えると、
「こっから15分くらい歩くけど、連れてったるわ〜」
とかなんとか言いながら、脇の森の道に入っていく。
わたしはこの次東大寺に行こうと思っていて、そのおじさんの行く方向は完全に逆なのだが、まあこれも縁だし、と思い、着いて行くことにした。
道の脇に生えている木の名前などを教えてくれながら、おじさんは進む。途中、誰ともすれ違わない。いったい、どうなっているんだろう、と不安になるほど静かな山道。
途中、おじさんは一本の細い枝を折り、その葉っぱをわたしに見せてくれた。
「この葉っぱ、ちょっと変わってるやろ。」
「はあ、葉脈がないですね。」
「そうや、この木は高山植物やのに、この辺だけには生えてるんやで。まあなんの役にも立たんけどな。」
「ふうーん、すごいですねえ。」
「これ、ご神木やねんけどな。」
「え!神木!?えーー!!」
わたしの驚きを意にも介せず、神木の小枝を持ってニヤニヤしている宮司さんふうのおじさん。大丈夫なのか?
まあきっと、この辺の主であることには間違いない。
そんなことを思いつつ、森の道をおじさんに着いて歩くこと20分。
ようやく人の気配のする道が見えてきた。
そこまで来ると、おじさんは、
「この先が新薬師寺や。行ってお参りしてきい。」
そう言って、わたしを置いて、もとの森の道に戻って行った。
いったいぜんたい、どういうつもりで、こんな通りすがりの人間のために、自分のとこの神社でなく、ちょっと歩くお寺まで案内してくれたというのか。うん?それとも、おじさんはそのお寺の、客引きだったのか?
まったくわけが解らないまま、でもまあせっかくだからお参りしていこう、と、新薬師寺に、お参り。
とても気持ちの良いところだった。
はあそれにしても、ずいぶん歩いたぞ。
当初の目的の東大寺までは、どれくらいかかるのか。
お寺の受付の人に訊くと、歩いて30分くらい、だそうだ。
がしかし、ここまで、朝からもうずっと歩き続けている。
お腹もすいたし、なんだかもうヘトヘトだ。
けど、代わりの交通手段もなく、仕方なくまた歩き始める。
歩けど歩けど、目的地は遠い。
はあお腹がすいた。というか、すき過ぎだ。
わたしの空腹は、かなりのピンチなのだ。
なぜなら、脂肪がほとんどないから。
空腹時に燃焼するための、予備の脂肪がからきしないのだ。
だので、空腹もピークになると、目は落ち窪み、見るも無惨な状態になってしまう。もうこれ以上は動けん、というふうに。
けど、そこらにちょうどいい具合の食べ物屋もなく、その"ガス欠状態"でしばらく歩くハメになった。
さっきまで青空だったのに、雨が降ってきた。
しかも、本格的。
目的地までバス停あとひとつ分、というところで力つき、不本意ではあるが、ちょうど来たバスに乗り込んだ。
そして、不本意ながら次のバス停で降り、バス停の屋根の下で、しばらくザザ降りの雨をぼうっと眺める。空腹のため、もう頭が働かない。とにかくなにか口に入れなくては。
ザザ降りの雨の中に、一歩踏み出した。
そして目についた最初のお店に、やみくもに入った。
...むむう、なんかちょっと高そう。
でも仕方ない。
ものすごく迷ったが、茶粥定食(お粥で1,400円、どうしよう、とずいぶん迷ったのだ)を頼んだ。
空腹の胃に、茶粥は、優しく沁み渡った。
おいしかった。おかわりした。
ふう、落ち着いた。
危なくそこらで力つきて、鹿たちのソファーとかになるところだったよ。
お腹もどうにか落ち着いて、東大寺に向かう。
さきほどの空腹の影響か、まだちゃんと頭が働かない。ふらふらと歩いていると、人力車のお兄さんが、「もし大仏さんを見に行くならこっちですよ」と、わたしが行こうとしていた別の方向を指差してくれた。ありがとう、助かりました。ただやみくもに歩いてました。
そして、やっと、東大寺。
たぶん、誰かに連れて来られるのでなく、修学旅行とかでもなく、自分でこうして見にくる、というのは、全然見え方が違うんじゃあないかな、と思う。
やはり、すごいな。歴史だな。
満足。
空も、また晴れてきた。
大仏さん見れたし、さあ、ライブに向かおう。
そうして、月のきれいな夜。
新ノ口の、GOOD LOVIN'という小さな素敵なお店で、歌いました。
ヤマカワさんはその後名古屋へ。
わたしは、八木のホテルで就寝。
9月26日 奈良 今井町ー天川村
前日に、西口さんから、今井町がおすすめだ、と聞いていたので、朝早くから今井町を歩いた。
空は青く、秋の匂いがする。
静かで、趣のある、古い素敵な町並み。
落ち着くなあ。
観光地のようなお土産屋さんなどはなく、ただ、昔のままのその家に、人々が普通に暮らしている、そういう町。
細い路地をうろうろ歩きまわり、お腹も空いたので、八木西口駅前のパン屋さんで、朝ごはんにパンとコーヒー。
そうして、天川村に向かった。天川村というのは、7、8年くらい前にスパン子が連れってくれた山奥の村で、そのときとても気に入ったので、また機会があったらぜひ行きたいな、と思っていたのだ。芸能の神様、天河弁財天もあることだし。今回、せっかく奈良に呼んでもらったので、ついでに足を伸ばしちゃおう、と計画したのだ。
下市口という駅から、バスで山道を1時間。
久しぶりの天川村。
相変わらず気持ちがいい。
山が美しい。
川の水がとても美しい。魚も見える。
はあ〜、やっと来れたあ。
弁財天にお参りして、
天の川温泉に入る。
最高だな。
そうして、そこから歩いて40分の宿に向かう。なにしろバスはほとんどないので。
40分くらいは、普通に歩く覚悟だ。
道路をしばらく歩いていると、横に、乗用車が止まった。
「どこまで行くんや?乗ってくか?」
おじさんが、声をかけてきた。
見ると、もうすでに二人のお嬢さんを乗せている。
そういえば、以前この村に来たときにも、道路を歩いていて"乗ってくか?"と声をかけられたぞ。
そのときと同じおじさんなのか、それともそういう文化の村なのか。
どちらにしても助かるので、ありがとうございます!と、宿まで乗せてもらった。
そのおじさんは、こんにゃくを作っているそうだ。
無事、宿に到着。車に乗せてもらったので、ずいぶん助かった。
そうして、川を眺めたり、夜の散歩で美しい月を眺めたりして、のんびり過ごした。
9月27日 天川村ー八木ー京都
朝、宿のオクサンに、車で天河弁財天まで送ってもらえることになった。
昨日お参りしたけれど、なかなかここまで来ることはないと思うので、帰る前にもう一度お参りしておこう、と思ったのだ。
オクサンは、せっかくなので御手洗渓谷にも寄りましょう、と、近くの美しい渓谷に連れて行ってくれた。
渓谷の見えるところで車を止め、わたしが、すごいなあ、と景色を眺めていると、良かったら、10分くらい歩いて来ていいですよ、わたしはここで待ってますので、と言ってくれた。
車を降り、滝の方へと歩いていった。階段を昇り、細い橋を渡る。
そして、ごうごうとうなる滝を上から見下ろす。
すごい。
美しい。
恐いくらいの迫力。
その滝のそばで、そびえる山を見上げて、滝の音を聞き、川の音を聞く。そこにいるのはわたしひとりで、ほかにはときおり小鳥が水を飲みに降りてくるくらい。少し心細いような、でも、気持ちの良いような。
しばらくぼうっとしてから、車に戻った。
それから、弁財天に送ってもらい、宿のオクサンとお別れした。
もう一度お参りして、それからまた近くの川で魚を眺め、さあそろそろ戻ろう、と、バス停までの道を歩きはじめた。
そこからバス停まで、やはり歩いて40分くらい。
もしかしたらまた、誰か拾ってくれるかも。
そんな淡い期待を抱きつつ歩く。
県道をしばらく歩いていると、オンボロの軽トラが横に止まった。
「おーいどこまで行くの。」
やはり!歩いている人を拾うのは、この村の文化なんだ!
「川合までです〜。」
「そんなら乗って行き〜。」
という具合に、また乗せてもらった。
軽トラのおじいちゃんのことばは、かなりの方言のため、ほとんど聞き取ることができなかったが、どうやら"箸立てなどを作って"暮らしているらしい。今度来たときには、お土産に箸立てを買って行ってくれや、と言っていた。
もちろん!
買うよ、箸立て!
乗せてくれてどうもありがとう!昨日のおじちゃんも、宿のオクサンも、今日のおじいちゃんも、みんないい人だった。
ああまた行きたいな。
そうして山を下り、八木へ向かった。
今回奈良のライブに呼んでくれた恩人、西口さん夫妻と、カフェでひとときを過ごし、それから、彼らの愛犬に会いに行き、少しゆっくりしてから、京都へ。
北大路でいーたん夫婦と合流(かなりのグッドタイミングだった)、おいしいメキシコ料理のお店でたくさん飲んで食べてしゃべって、ふたりの家に泊めてもらい、この上なく安らいで、ぐっすり眠った。
9月28日 京都 SOLE CAFE
朝からホットケーキですよ。
おしゃれすぎる。
いーたんの家は、おしゃれだ。
どこを見ても、カフェみたい。
ドアノブひとつ、電気の傘ひとつ、どれを取っても素敵なのだ。
いいなあ。センス抜群だなあ。かわいいワンコもコトリもいるし。
でも我が家では、まねしても全然再現できそうにないなあ。
そんなことを思いながらすっかりまったりし、お昼前にいーたん宅を後にした。
道々、雑貨屋やカフェなどにいちいちひっかかりつつ、なんとか入り時間にはSOLE CAFEに到着。
たゆたうのふたりに再会。
とてもいいふたりぐみ。
ふたりのステージは、ゆるゆるとたゆたうような、けれど、ときどきハっとするくらいの表情を見せる、とても不思議な空間だった。誘って良かったなあ、いいなあ、そして、ふたりともかわいいなあ、と思いながらソデで見ていた。
わたしのステージも楽しく、最後にはまた例によって、見にきてくれたいーたん夫婦や、たゆたうのふたりも巻き込んでの演奏。みんな、いつも唐突に巻き込んじゃってごめんよ。でもおかげで楽しかったです。ありがとう。
ライブ後は、SOLE CAFEのご主人がみんなにパスタをふるまってくださり、みんなでおしゃべりしながら、おいしい楽しい夜になった。
SOLE CAFEのおふたりは、とても素敵だった〜。出会えて良かった。どうもありがとう。
そうして、楽しい夜は更け、わたしはたゆたうの二人が暮らす家へ泊まらせてもらった。女の子5人で住んでいるそうだ。
おもしろいお家。
居間で寝かせてもらったのだが、なんかマンガ貸して〜、と言うと、ヒロチャン、あこやん、それぞれが、おすすめマンガを持ってきてくれた。両方入り口だけ読んだところで眠くなり、残念ながら眠ってしまった。
9月29日京都ー滋賀ー東京
朝6時半。
居間で寝ているわたし。
そばのキッチンで、なにやらガザゴソ、ジュージュー音がしている。
朝だから、卵でも焼いているのかな、と思いながらまどろむのだが、なんかずっとジュージュー言っているぞ。気になる。卵にしては、焼き過ぎている。
起きてみると、たゆ家の同居人の女の子が、すみません、うるさかったですか、と言いながら、なにやらガサゴソやっている。
なんか豆腐ハンバーグが作りたくって、と彼女は言った。
豆腐ハンバーグ。
はあそれか!さっきのジュウジュウは!
それにしても、朝の6時半から豆腐ハンバーグを焼くお嬢さん。
彼女は、たくさんあるのでよかったらどうぞ、とわたしにもすすめてくれた。
けど、寝起きに豆腐ハンバーグは無理〜。気持ちだけいただく。
その後、わたしに紅茶をいれてくれ、出かけて行った。
紅茶をひとくち飲んでみると、なんと、ショウガのみじん切りが入っていた。
わたしがゴホゴホ咳をしたり、くしゃみをしたりしていたからだ。
なんて気の効くお嬢さんなんだ!
心がほっこりした。
どうもありがとう。
そうして、8時にはたゆ家を後にし、滋賀の瀬田に向かった。
いつも関西方面でのライブのときにお世話になっているお寺のおじょうさん、じゅんなちゃんの結婚式なのだ。
瀬田駅でバンバンのみんなと待ち合わせて、結婚式の会場へ。
いい式だったなあ。
もらい泣き。
そして、バンバンとともに歌い、いい時間を過ごして、家路についた。
いい旅だった。
たくさんたくさん、ありがとう。
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