2020年1月27日月曜日
こたつが恋しい
こんな寒い日は、こたつが恋しい。
こたつなしの生活になってから、いったい何年経っただろう。
もともと福岡出身のわたしは、こたつのある環境で育った。
こたつの甘やかな誘惑。それにまつわる怠惰。
こたつでウトウトして、お母さんにたしなめられる記憶。
こたつに入っていると暖かいが、
その当時、部屋自体はそんなに暖かいわけではなく、
鼻の頭は冷たかったりするような、そんな感覚。
そして、トイレに行くのがとてつもなく億劫だったりする。
一方、夫は北海道出身で、こたつのない環境で育った。
北海道の人たちは、家じゅうを暖めて、
暖かすぎる部屋の中で、冬もTシャツで過ごす人が多いらしい。
この育った環境の違いで、
九州育ちのわたしと北海道育ちの夫との間で何年も
"こたつありナシ"のやりとりが繰り広げられ、
結局、
わたしは、いろいろなメリットデメリットの天秤にかけた上で、愛しいこたつを手放した。
それがいつくらいのことだったかは思い出せないけれど、たぶん17年以上は前だと思う。そのこたつは、当時寒くて困っているという関美彦さんに、北山ゆう子さんを介して譲ったような記憶がある。
誰かに譲ってもいいくらいに、
わたしはこの人生で充分にこたつを満喫した、と思えたので。
わたしは若い頃、一人暮らしのときに、
"こたつで寝落ちしたまま気持ちよく寝る生活"
を研究した。
要するに、"こたつ怠惰"を極めたのだ。
まず、こたつで寝てしまったあとに布団を敷いて寝直すのが死ぬほど億劫。
これを解決するために、
敷き布団の上にこたつをセットした。
そうすると、次の問題。
こたつで寝ると、そのうち熱くなる。
けれどもこたつを消すと、ひゅうひゅうと寒くなる。
その間を取るために、
こたつ布団とじぶんの間に、毛布を入れてみた。
熱くなってスイッチを切っても、
毛布がやんわりと守ってくれる。
これでこたつで寝るときのいろいろな問題は解決だ。
さらにこたつを離れなくて良い工夫を考える。
冷蔵庫までジュースを取りに行かなくて良いように、
ジュースにこたつまで届く長いヒモを付けて冷蔵庫にセットしてみた。
そのヒモを引っ張れば、こたつに居ながらにしてジュースを冷蔵庫からコロコロと引き寄せられるというわけだ。
しかしそのアイデアはすぐに虚しく崩壊する。
ジュースをご機嫌にヒモでひっぱって取り寄せるのはよしとして、
しかし結局...
その冷蔵庫の扉は、こたつを出て自分で閉じに行かなければならなかったのだ...
わたしは後日、冷蔵庫を閉じるための、長めの棒を入手した。
そんなバカバカしい実験を、一人暮らしの中で繰り返しに繰り返し、
いつのまにか部屋の入り口からこたつまで、
狭い6畳に、本やら服やらなにやかやで、なぞの道ができてしまっていた
(当時わたしはそれを"花道"と呼んでいた)
そんな一人暮らしを経て、
夫と数年暮らし、
関さんにこたつを譲る頃にはもう充分に、
「こたつは満喫した」と思えるじぶんでいたのでした。
今は、
こたつの代わりに、
ダイニングテーブルの下に、足元のヒーターを置いている。
これは暖かい上に、圧倒的に、怠惰にならない。
こたつはなくても暖かく、
部屋やじぶんが乱れることもなく、すっきりと暮らしている。
けれどもこんな寒い日は、
あのこたつで、
あの怠惰を、
また存分に貪りたい気も、するのでした
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