2008年11月26日水曜日
さかさまの空
「ぼくたち、空の上をさかさまに走ってるよ」
朝、雨の中自転車で息子を園に連れて行く途中、
後ろで息子が言った。
なんだろう、と思って下を見てみると、
雨に濡れた道路に空が映っていて、
その上をわたしたちの自転車が走っているのだった。
ほんとに、空を、逆さまに走っているみたいだった。
一瞬、なにかがゆらいで、
地面がないみたいな気持ちになった。
そういえば小さい頃、
わたしは手鏡の中を上から覗き込んでは、
ずーっとずーっと、"天井を歩くつもり"でその世界を楽しんでいた。
逆さまの世界。
忘れていたその感覚を少しだけ思い出しつつ、
でも、
今のわたしは、
息子を園に届けるため、
意識をもう一度この世界に戻して、
自転車をこぐのに集中した。
危ない危ない。
またあの世界に行くとこだったよ。
ふう。
2008年11月23日日曜日
歌う一日店長
どこかでライブをした後、終電あたりで帰って来て吉祥寺の駅に降り立ち、なんとなくもうちょっと飲みたくて寄るお店、それがハバナムーン。
いつもいいレコードがかかっていて、美味しいおつまみと、美味しいお酒が飲める。
ちょいと寄るつもりが、居心地が良くってついつい深夜まで(ときには朝方まで)のんびりしてしまうこのお店で、ちょっと冒険ということで、歌う一日店長をやらせてもらいました。
簡単なわたしの手作りおつまみも出せたらいいなと思って、それならせっかくだから、代表曲「愛のコロッケ」も作っちゃおう、とはりきっていたんだけれど、実は前日、前々日とえらく体調を崩してしまい、コロッケは仕込みに時間もかかるし、ちょっとあきらめムードだった。
けれど、当日になってみると体調も少し良くなっていて、なんだかやれそうな気がしてきた。慌てて仕込み開始。もうひとつのメニュー、アボカドとタコと豆のサラダも平行して作る。
しかし急発進だったので、家での仕込みが間に合わず、続きはハバナでやることにした。
急いで出かける用意をして、カウンターに飾れるよう、家の前のお花をちょんちょん摘んで出かけた。
音を出せるようにセッティングした後、ひたすらコロッケを丸める。
そうこうしているうちに開店、お客さんが入っても、まだ丸めていた。
その横でお酒を作る本来の店長、木下さん。
お店は開店したというのにコロッケ作りの作業はまだまだ終わりそうになく埒があかないので、とりあえず一旦、第一弾を揚げ、
残りは木下さんに丸投げして(すんません)、ライブを始めることにした。
途中、吉祥寺在住のハッチェル特急楽団のタケリコさんが偶然ほろ酔いで通りかかって、一杯飲んで、ライブチャージ代わりにポケットの小銭を全部置いていった。
ライブの休憩時間にはカウンターの中をうろちょろしながら、来てくれたひとたちとしゃべったり、
木下さんがかけたレコードのA面が終わったら裏に返したり。
わたしが仕込んで、仕上げの味かげんや盛りつけはまたもや木下さんに丸投げしたアボカドサラダも、ちゃあんとかわいく盛られて提供されていた。
そうしてまた歌って、
弾いて、
楽しい夜は更けたのでした。
こんな楽しい企画を提案してくれた木下さん、集まってくださったみなさん、どうもありがとうございました!
もし次やるときは、もっと体調を万全にして、もっと飲みつつもっといろいろやるぞう。
*今回の写真は、WATANABE HIROTO さんが提供してくださいました。どうもありがとうございます。*
2008年11月11日火曜日
おじいさんがいつか見た風景
近所のイベント会場の一画で、
銭湯画を公開で書いている師がいた。
師は、周りなど気にせず、迷いなくどんどん描いていく。
わたしはその様子にすっかり心奪われてしまった。
この風景は覚えているんですか、と質問してみると、
頭に入ってるからね、と、絵を描く手は休めずに、ぶっきらぼうに答える師。
できあがった絵を見ていると、
なんだかその風景に、泣けてきた。
おじいさんが、いつか見た風景。
木々に光が当たっていて、水面がキラキラしている。
これは、朝、だろうか。
そこは雑多で賑やかなイベント会場だったけれど、
その絵の場所だけくっきりと、その風景になっていた。
わたしはそこにたたずんで、その川をほんとに見ているような気持ちになった。
絵を見て涙が出たなんてはじめてだ。
おじいさんの心に焼き付いている、いつかの風景。
わたしはよく銭湯に行くのだけれど、
銭湯で、お湯につかりながら雄大な風景を眺めてのんびりとした気持ちになるのは、
こんな、銭湯画の師がいるからなんだなあ、と、
改めて思った。
最後に師は、はしっこに、長良川、と書いた。
そうか、長良川なんだ。
この風景を、ほんとに見てみたいな。
2008年11月8日土曜日
黄金町
横浜の、黄金町、という場所に初めて行った。
黄金町バザール、というアートイベントの中にある、カフェ「視聴室」でのライブ。
降り立った街はとてもあやしくおもしろく、小さなピンク色のスナックや居酒屋の中をジロジロのぞきつつ、わざと細い道を選んで歩く。
リハーサルと本番までに時間があったので、駅前の、とても細い作りの小さな焼き鳥屋に入った。
店内のテレビでは日本シリーズが流れていて、でもそれとは全然無関係の、常連風のおばちゃんと店主の黄金町的日常会話を小耳に挟みながら、「もしも宮中晩餐会に招かれたら」という本を読みつつ、熱燗をおちょこにそそいでチビチビ飲む。
時折、いったいここはどこなのか、という錯覚に陥る(宮中の晩餐会なのか、それとも黄金町か、はたまた熱気に満ちた球場なのか)。
そうしているうちにあっという間にステージの時間になり、熱燗でポっとあったまった感じで会場に。
時折頭上を通り過ぎてゆく京急電車の音や、突然鳴り出してなかなか止まない目覚まし時計(たぶんどこかのアートブースより)、なんかの参加も許しつつ、ステージを楽しんだ。
聴いてくれているひとりひとりの顔が見える、
歌がひとりひとりに届く感じを味わいつつ、
いい時間だった。
どうもありがとう。
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