昼の能古の島の探検ですっかり疲れていたのだが、その夜は、父とふたりで飲みに行く約束をしていたので、心地よく疲れた身体で藤崎に繰り出した。
会社帰りの父と待ち合わせ、磯貝、という魚料理屋さんに行った。
カウンターに並んで、ふたりともまずは生ビールを頼む。お通しをつまみながら、ゆっくりと飲む。
カウンターの前には、氷が敷き詰められた上に魚市場のように魚たちが並んでいる。伊勢エビもザルの中でガンガンに動いている。
刺身の盛り合わせ、おいしかったなあ!!
中生を飲み干すと、後は冷酒をふたりでちびちびと。
父とふたりでゆっくり飲むのって、すごく久しぶり、もしくは初めてに近いかも知れない。
いろんな話をした。仕事のこと。家族のこと。
父は、普段お酒が入っていないときはあまりしゃべらない方なので、こうやって差しで飲みながらゆっくり話せてとても良かった。へえ、そんなこと考えてたんだあ、とか、うれしい発見があったりして。
父が、今までずっと家族を一番大切にしてきてくれたこと、も、改めて感じた。
わたしの小さい頃、父は、普段は仕事仕事でほとんど家にいなかったが、そのせいでわたしたち子どもが父を遠くに感じることはなかったし、逆に、みんな父のことが大好きだった。いつもそばにいることはなくても、父の愛を、肌で感じていたんだと思う。
大人になってこうやって父と話して、ああやっぱり、お父さんがわたしのお父さんで良かったなあ、と思った。そして、父にもそう言った。
そんなふうに、おいしい魚料理を食べながらゆっくりと飲み、満足な気持ちで、昼間の疲れも手伝って、ああもう眠いや、と言いながらお店を後にした。
そうして、父のお気に入りのスナックに移動。そう。わたしがもう眠いと言ったからといって、2件目に行かないわけにはいかないのだ。楽しい夜というのは、1件目だけでは尻切れとんぼなのだ。
スナックで、父はウイスキーの薄い水割りを、わたしはロックを飲みながら、ママさんとしゃべる。
そうして父は上機嫌に歌を歌いはじめる。コモエスタ赤坂、夜の銀狐...。
もちろんわたしにも歌えと言う。
もちろん歌った。
ギターがあればもっといろいろオリジナルとかも歌いますよ、と言ったら、ママさんほんとに店の奥からギターを出してきた。驚き。新しく入って来たほかのお客さんに向けても、歌う。そのおじさんの歌ももちろん、聴く。
そんなふうに、父との楽しい夜は更けていった。
うん、すごく楽しい夜だった。
お父さん、ありがとう。
2 件のコメント:
とても素敵なお話しですね。
読んでいてとてもやわらかな気持ちになれました。
その夜、スナックにいたお客さんはラッキーですね。
ありがとうございます。
いい夜でした。
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